2025 . 11 . 18

HPVワクチン被害者の声に学ぶ ~ 一人ひとりに寄り添う医療を目指して ~

今回、法人上半期総括会議において、HPVワクチン接種後に健康被害を訴えている梅本美有さん(HPVワクチン薬害訴訟九州原告)から「私に起こったHPVワクチンの副反応」という題目でお話を伺う、大変貴重な機会を得ました。症状の経過、日常生活への影響、そして救済制度の課題について、生の声を通して深く学ぶことができました。

薬剤師として、ワクチンの効果だけでなく、起こりうる副反応についても正確に説明し、患者さんが十分に理解した上で選択できる環境を整えることが求められます。「安全です」と断定するのではなく、「現時点でわかっているリスク」や「未解明の部分」についても誠実に情報提供する姿勢が重要であることを改めて認識しました。

また、現在の救済制度では因果関係の証明が困難であることから救済を受けられないケースが存在しています。被害者救済の観点からも、「接種後に症状が生じた」という事実に基づき、患者さんをより確実に保護できる仕組みへと改善していく必要性を強く感じました。

公衆衛生政策では「集団全体の健康増進」と「個人の安全性や自己決定権」とのバランスをどう取るかが常に問われます。統計上、まれな副反応は「許容範囲」と評価されることがありますが、その「1人」になってしまった患者さんにとっては、決して許容できるものではありません。統計上は「まれ」であっても、当事者の方には100%の苦痛であるという現実を忘れてはなりません。

「多数の利益」が重視される状況では、少数者の声が切り捨てられてしまう危険性があります。「集団のため」という考え方が優先される中で、個人の苦しみを見過ごしていないか――この問いに向き合い続けることが、本当に患者さんに寄り添う医療の出発点であると再確認し、患者さん一人ひとりの尊厳を守る医療実践を追求していきます。

センター薬局 城 裕一郎